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犬猫の腫瘍 口腔:非上皮性腫瘍

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口腔内のメラノサイト腫瘍

臨床情報および一般概念
メラノサイト(メラニン細胞、メラニン産生細胞)の腫瘍は、WHOの組織学的分類では良性のメラノサイトーマ(Melanocytoma 良性メラノーマ、良性黒色細胞腫とも呼ばれていた)、悪性黒色腫(Malignant melanoma、単にメラノーマとも呼ばれる)に大別されています。しかし、実際には組織学的な良性/悪性の区別は明確に分けられないところが多々あります。特に犬では、悪性黒色腫は口腔内腫瘍の中で最も多く、猫では稀です。また、犬の口腔内メラノサイト腫瘍のほとんどは高悪性度で、侵襲性が強く、転移率が高いことで知られており、従来からいかなる細胞学的形態でも転移する可能性があると言われてきました。しかし、組織学的に悪性と判断されても再発や転移を起こさず、長期生存する低悪性度タイプも存在することが報告されています。(低悪性度タイプは病理診断症例集17でより詳細に説明していますので、参考にしてください)
 

粘膜上皮内や粘膜下組織浅層に位置するメラノサイトから発生し、主に歯肉や口唇、しばしば頬粘膜、口蓋、舌、喉頭に起こります。性差および日本での明らかな好発犬種は知られていませんが、高齢犬で主に起こります。低悪性度タイプは平均8歳程度、高悪性度タイプは平均12歳程度で、また皮膚の悪性黒色腫よりも高齢のことが多いとも言われています。
 

肉眼的には、無症状であると、歯科処置の際など1cm以下の結節として発見されます。小型の病変は有茎性で、低悪性度タイプのことが多いです。臨床症状を示すタイプの多くは、3-4cm以上の大型病変で、固着性で、急速な成長に伴って壊死や潰瘍を伴います。有茎性のこともあります。色はメラニン色素量によって異なり、黒色~様々な濃さの茶色、灰色、白色、ピンク、出血を伴うと赤色など多様です。単一の病変内でも色素沈着にばらつきがあります。通常は硬いですが、壊死や二次感染を伴うと軟性となります。骨浸潤することもあります。
 

猫のメラノサイト腫瘍は稀で、口腔内悪性腫瘍の1%未満です。多くは悪性です。8-12歳(平均12歳)と高齢で多く、犬と類似の部位に発生します。
 

細胞診
細胞診塗抹では、腫瘍化したメラニン細胞は紡錘形態のものから類円形の形態をとるものまで、多形性を伴って観察されます。細胞同士の接合性も上皮性腫瘍のように集簇を形成するものから独立円形細胞様に孤在散在性に採取されるものまでと様々です。観察されるメラニン細胞の典型的な細胞形態は、微細顆粒状の核クロマチン網工を示す類円形核と境界不明瞭な紡錘形~不定形の細胞質を有し、細胞質内にはRomanowsky染色で黒~黒緑色に染色されるメラニン顆粒を含んでみられます。悪性黒色腫(メラノーマ)では、N/C比は上昇し、核の大小不同や核小体の異常(大型化、複数、不整な形態)、複数核などの異型性が観察されます。顆粒が観察されないタイプ(乏色素性または無色素性)のメラノサイト腫瘍では、時に独立円形細胞腫瘍や未分化な上皮性悪性腫瘍との判別が困難になることがあります。特に口腔内メラノサイト腫瘍ではメラニン顆粒に乏しいことが多く経験されますが、このような場合でも慎重に鏡検していくと、わずかに顆粒を伴うメラニン細胞を確認できることがあります。
細胞診でメラノサイト腫瘍と間違われやすい細胞として、色素沈着を伴う皮膚基底細胞由来腫瘍(毛芽腫など;正常なメラニン細胞が病変に混入するため)やヘモジデリン貧食マクロファージ(ヘモジデリン色素はRomanowsky染色で黒~黒褐色の顆粒として観察される)が挙げられます。メラノサイト腫瘍の悪性良性の判定は、細胞形態のみで評価されるものではなく、腫瘍細胞の浸潤程度や解剖学的な発生部位が重要な指標となります。
 

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口腔内悪性黒色腫(犬)。左:細胞は上皮性細胞様の集塊を形成して観察されます。右:細胞質内には黒緑色に染色される細胞質内顆粒を様々な程度に含みます。腫瘍細胞には強い異型性が観察されます。
 

病理組織
腫瘍細胞は類円形~多角形の上皮様細胞タイプ、紡錘形細胞タイプ、それらの混合タイプと様々な細胞形態を取り、細胞や核の多形性の程度も様々です。悪性黒色腫では細胞型は予後の指標にはなりません。上皮内での腫瘍細胞の増殖や、境界部活性(Junctional activity)は、高悪性度タイプでよく見られます。時に化生性の骨や軟骨が形成されます。
 

色素沈着の程度は症例によって様々で、腫瘤内の一部でメラニン顆粒を欠くことが多いです(乏色素性または無色素性)。ただし、色素量と腫瘍の挙動の関連性はないようです。転移巣は通常色素沈着がみられますが、原発巣で色素があっても転移巣ではみられないことも、その逆に原発巣で色素が乏しくても転移巣で色素がみられることもあります。重度に色素沈着を起こしたものでは、細胞や核の形態学的検査が困難となり、メラニン色素の脱色の作業が必要になります。逆に、メラニン顆粒含有量の乏しいものでは、PNL2やMelan-Aなどメラノサイトマーカーを用いた免疫染色が必要になります。
 

犬の組織学的な予後マーカーには核異型や分裂指数、Ki-67などが挙げられています。口腔や口唇では、高倍率10視野中4個以上が予後不良とされています。
 

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予後・治療法
比較的高分化で初期段階のものは完全切除で良好な予後が得られることもありますが、一般的には急速に成長・進行し、予後の悪い腫瘍です。高悪性度タイプは、原発巣発見時には既に、咽頭後リンパ節などの領域リンパ節へ転移し、三分の二以上で肺などの遠隔臓器にも転移があると言われています。組織学的な予後因子の他にも、臨床ステージ、病変の大きさ、遠隔転移の有無も予後に影響するとされています。
 

治療は、現在は外科的切除が第一選択ですが、頻繁に局所再発や転移が起きます。肉眼では分からないレベルで腫瘍細胞は上皮内に沿って側方へ広がるので、外科的切除の際には、側方と底部に広いマージンを確保することが必要です。外科単独での中央生存期間は150~318日と報告により様々で、1年生存率は35%未満です。他にも、放射線療法の併用または単独、化学療法などがあります。
 

猫の口腔内悪性黒色腫も一般的に予後不良です(平均61日)が、放射線療法により中央生存期間が146日であったという報告もあります。
 

犬の低悪性度タイプや組織学的な予後因子、免疫染色に関しては、病理診断症例集17でより詳細に説明していますので、参考にしてください。
 

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