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犬猫の表皮/基底細胞の腫瘍

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正常な皮膚の構造

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乳頭腫 Papilloma

臨床情報
扁平上皮由来の良性腫瘍です。パピローマウイルス感染が原因と考えられています。非ウイルス性のものは扁平上皮乳頭腫(Squamous papilloma)と呼ばれ、これは非腫瘍性疾患に分類されています。乳頭腫は、肉眼的には1cmよりも小さいものが多く、固着性または有茎性結節として認められます。多発性の場合には乳頭腫症(papillomatosis)と呼ばれます。どの年齢でも起こりますが、多くは2歳齢以下で見られます。中齢犬でシクロスポリンを投与した際に発生しやすくなります。口腔と皮膚どちらにも発生し、単発性のものは体のどこでも起こりますが、多くは顔面や耳、四肢で認められます。すべてではありませんが、多くは週単位~月単位で自然退縮します。悪性転化することは極めて稀です。
細胞診
様々な分化段階の扁平上皮(幼若~角化扁平上皮まで)が採取されますが、分化傾向の進んだ扁平上皮が主体として観察されます。これらの細胞には異型性は観察されません。
病理組織
真皮の線維血管性間質によって支持される、表皮の外方性の乳頭状増殖が特徴です。扁平上皮は基底層・有棘層・顆粒層・角化層と規則正しい配列を取ります。表面は厚い角質層を伴うことがあり、角化亢進は正角化性または錯角化性です。顆粒層におけるケラトヒアリン顆粒の増加や大型化、有棘層におけるKoilocyte(濃縮した核の周囲が抜けて大型化した空胞細胞)の出現、過形成化した有棘層の細胞質が淡好塩基性化といった細胞変性効果や弱好塩基性核内封入体形成などが見られることがあります。
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予後・治療法
完全切除により治癒します。

内反性乳頭腫  Inverted papilloma

臨床情報
扁平上皮由来の良性腫瘍です。パピローマウイルス感染が原因と考えられています。犬でも稀と言われていますが、猫では極めて稀です。肉眼的には、多発性に膨隆性で硬く、へそのように落ちくぼんだ結節として認められ、多くは2cm以下です。一般的には3歳齢以下に見られます。好発部位は腹部です。外方性の乳頭腫とは違い、自然退縮しません。
細胞診
乳頭腫と同様の細胞診所見が観察されます。
病理組織
扁平上皮の内方性増殖という特徴以外は、組織学的には乳頭腫(Papilloma)と同様です。クレーター状の内腔に広がる乳頭状構造が認められます。爪床領域で認められることもありますが、この場合には爪床角化棘細胞腫(Subungual keratoacanthoma)と鑑別が必要です。
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予後・治療法
完全切除により治癒します。

扁平上皮癌 Squamous cell carcinoma

臨床情報
扁平上皮由来の悪性腫瘍です。猫では最もよく見られる皮膚の悪性腫瘍で、犬でも肥満細胞腫に次いで二番目に多い皮膚腫瘍です。太陽光線への暴露との関連性があり、色素の薄い皮膚に多く発生します。日光角化症から発生することもあります。猫の好発部位は頭部で、特に鼻鏡、耳介、眼瞼と被毛の少ない部分です。白毛の猫では他の毛色の猫に比べて13倍危険率が高いと言われます。犬の好発部位は側腹部や腹部の色素のない、もしくは色素の薄い部分の皮膚で多く発生します。好発犬種は短毛で白い毛のダルメシアン、ビーグル、ブルテリアなどです。発症平均年齢は猫では11歳齢、犬では10歳齢です。肉眼的には、局面状、カリフラワー状、クレーター状、茸状と様々で、表面は脱毛、紅斑、潰瘍、痂皮を伴います。大きさは数ミリ~数センチ程度です。単発性のことも多発性のこともあります。
細胞診
腫瘍細胞は孤在散在性~シート状から塊状に採取され、時に好中球を主体とする化膿性炎症を伴って見られます。腫瘍細胞は類円形ないし多角形で、核は細網状のクロマチン網工を呈する幼若な形態を示し、核と細胞質の成熟不一致(核細胞質解離)が認められます。大量の角化物が採取されることもあります。
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病理組織
細胞間橋を有する扁平上皮由来腫瘍細胞は、表皮から連続して基底膜を破壊しながら浸潤性に増殖します。豊富な線維増生を伴いながら、腫瘍細胞は島状、索状、小柱状に増殖します。高分化な場合には癌真珠(同心円状の層板状角化巣)形成が見られますが、低分化であると孤在性角化しか見られないこともあります。細胞学的特徴は細胞の分化度によって様々ですが、多くの場合、細胞と核は大型で、核はクロマチン増加性で、クロマチンは粗大顆粒状、核小大は明瞭化して大小不同を呈します。腫瘍の間質には多数の形質細胞が浸潤しますが、角化領域では好中球浸潤が顕著になります。
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予後・治療法
浸潤性、侵襲性の強い腫瘍ですが、鼻鏡原発を除き、転移は稀です。病期の後期には支配リンパ節に起こることがあります。治療法の第一選択は犬猫とも外科的切除です。凍結手術や放射線療法もあります。鼻鏡原発の場合、犬では猫ほど放射線療法は奏功しません。化学療法単独の奏効率は低く、外科手術後の補助的療法として用いられます。

症例リンク: 扁平上皮癌

基底有棘細胞癌/基底扁平上皮癌 Basosquamous carcinoma

臨床情報
扁平上皮または毛包漏斗部への分化を示す基底細胞由来の低悪性度の腫瘍です。猫では稀、犬では極めて稀に発生しますので、正確な発生率はよく分かっていません。基底細胞癌と扁平上皮癌の両方の組織学的特徴を有しており、臨床的あるいは肉眼的には扁平上皮癌や基底細胞癌と区別は付きません。発生場所や年齢、好発品種もほぼ同様と考えられています。
細胞診
細胞診では扁平上皮癌との明確な判別は困難です。
病理組織
表皮から連続してプラーク状の結節を形成します。真皮や皮下組織へ軽度の浸潤性を示しながら増殖します。大部分は基底細胞癌と類似の基底様細胞で構成されますが、小葉状増殖巣内で突然角化する腫瘍細胞が認められます。核分裂像は比較的多数観察されます。基底様の増殖巣部分にはメラニン色素沈着が見られることがあります。
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予後・治療法
生物学的動態もよく分かっていませんが、扁平上皮癌と同様に、局所侵襲性を有し、弱い転移能力(主に支配リンパ節への転移)が推測されています。

基底細胞癌 Basal cell carcinoma

臨床情報
基底細胞由来の低悪性度の腫瘍です。扁平上皮や毛包・皮脂腺・汗腺といった付属器への分化は示しません。猫では一般的な皮膚腫瘍とされていましたが、過去の報告を見ると、多くは毛芽腫(Trichoblastoma)や充実性嚢胞性アポクリン導管腺腫/腺癌(Solid-cystic apocrine ductular adenoma/carcinoma)に再分類されると考えられ、真の基底細胞癌は比較的稀であるかも知れません。犬は稀です。ヒトでは発生要因に慢性的な紫外線暴露が言われていますが、犬猫では確定的ではありません。肉眼的には、硬化した局面やくぼみのある結節として認められ、大きさは数ミリ~数センチ程度です。猫では多発傾向があります。表面は脱毛、痂皮、潰瘍を伴います。しばしばメラニン色素沈着によって黒色~青色を呈します。猫では鼻、顔面、耳が好発ですが、ボーエン病様疾患と関連がある場合にはどこでも発生します。犬では体幹が一般的ですが、しばしば無毛部にも発生します。また、爪床での発生の報告もあります。猫では10歳齢、犬では8歳齢での発生が多いとされています。
細胞診
細胞診のみで他の上皮性悪性腫瘍と鑑別することはできません。
病理組織
表皮から連続して、真皮や皮下組織へ浸潤性に増殖します。腫瘍細胞は小型で、濃染性の核と少量の細胞質を持ち、核分裂像は頻繁です。間質で線維増生をしばしば伴います。鑑別疾患は皮脂腺上皮腫や悪性毛包上皮腫などですが、基底細胞癌では付属器への分化が認められないことから区別されます。
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予後・治療法
第一選択は外科的切除で、完全切除されれば予後良好です。猫では支配リンパ節に転移を起こすことがありますが、再発・遠隔転移は稀です。犬での転移はよく分かっていません。

多中心性上皮内扁平上皮癌(ボーエン病様疾患)
Multicentric squamous cell carcinoma in situ (Bowen-like disease)

臨床情報
基底膜の破壊の見られない、表皮内に限局する扁平上皮由来の悪性腫瘍です。紫外線との関連はありませんが、パピローマウイルスが関与すると言われています。発生は猫では比較的稀で、犬では極めて稀です。肉眼的には厚い痂皮を被った局面や疣状病変として認められ、単発性のことはあまりなく、多くは多発性です。日光誘発性の上皮内癌/扁平上皮癌と異なり、日光が当たりにくい毛が多い部位や色素沈着のある部分にも発生します。口腔内粘膜に発生することもあります。好発年齢は10歳齢以上です。好発品種や雌雄差は知られていません。
細胞診
細胞診では扁平上皮癌との明確な判別は困難です。
病理組織
病巣部分の表皮や毛包外根鞘は肥厚して、正常部分との境界は明瞭なことがあります。増殖する扁平上皮由来腫瘍細胞は、基底層と有棘層を主体に認められ、毛包外根鞘へ広がります。腫瘍細胞はしばしば大型で、核クロマチン増加性の核を有して異型性を示します。空胞状細胞質を有することがあります。病巣内にはしばしば豊富なメラニン色素を含みます。角質層では、正角化性または錯角化生の角化亢進、色素沈着過剰が認められます。基底膜を超えた浸潤性増殖が認められるようになれば、扁平上皮癌と診断されます。
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予後・治療法
いわゆる初期癌と捉えられるので、個々の病変は切除により治癒します。しかし、他の部位に新たな病変が発生することがあります。また、扁平上皮癌や基底細胞癌に進行すると言われています。

無断での転用/転載は禁止します。

参考文献
World Health Organization International Histological Classification of Tumors of Domestic Animals, Washington, DC, Armed Forces Institute of Pathology, 1998
Tumor in domestic animals, 4th ed, Ames, Iowa, Iowa State Press, 2002.
Tumor in domestic animals, 5th ed, John Wiley & Sons, inc, 2017.
・Withrow & MacEwen's Small Animal Clinical Oncology, Withrow J.S, et al: Elsevier; fifrth ed, Saunders-Elsevier, 2013
・Gross TL, et al: Skin diseases of the dog and cat. Clinical and histopathologic diagnosis, 2nd ed, Blackwell, 2005.
・Cowell RL, Valenciano AC. Cowell and Tyler’s Diagnostic Cytology and Hematology of the Dog and Cat. 4th ed. St. Louis. Mosby. 2013.
・Raskin RE, Meyer DJ. Atlas of Canine and Feline Cytology, 2nd ed. W.B. Saunders. Philadelphia. 2009.

* 本腫瘍マニュアルは、主に上記の文献を参考にしていますが、IDEXXの病理診断医が日々の診断を行う際に用いるグレード評価などは他の文献等を参考にしています。