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犬猫の腫瘍 皮膚:リンパ球・形質細胞系腫瘍

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犬の髄外性形質細胞腫
Canine extramedullary plasmacytoma
臨床情報
形質細胞腫はBリンパ球が分化して、免疫グロブリン(抗体)を産生する形質細胞に由来する腫瘍です。犬の皮膚ではしばしば発生がありますが、猫など他の動物では稀です。多くは中齢~老齢で発生します。好発犬種はコッカー・スパニエル、エアデール・テリア、ケリー・ブルー・テリア、スタンダード・プードル、スコッチ・テリアです。ほとんどが単発性で、小型の僅かに盛り上がった丸い皮膚結節として認められ、表面は脱毛し、しばしば潰瘍化します。頭部(特に口唇と耳介)または四肢に多く発生します。病変の割面は、境界明瞭ですが被膜はなく、色調は白~赤と様々です。通常、多発性骨髄腫との関連はありませんが、多発性骨髄腫の犬で皮膚に多発性病変を形成することがごく稀にあります。
 
細胞診
細胞診では多くの場合、多数の独立円形細胞が採取されます。典型的なものは、核クロマチン結節の豊富な偏在性類円形核と強好塩基性に染色される中等量の細胞質を有しており、核の辺縁に淡染する部分(ゴルジ野)がみられるなど、分化した形質細胞に類似する形態を示します。また,複数核や大型核などもよくみられます。ときおり、細胞質の辺縁にピンク色に染まる突起を有する火炎細胞(flame cell)が認められますが、これは免疫グロブリン産生を示唆する所見です。
 

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犬の形質細胞腫の針生検標本。多数の独立円形細胞が認められ、大型核や複数核のものが目立ちます。核クロマチン結節は豊富、細胞質は強好塩基性であり、一部の細胞は核の辺縁にゴルジ野を有しており、形質細胞由来と判断されます。
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犬の形質細胞腫の針生検標本。細胞の辺縁にピンク色に染まる突起を有する火炎細胞(flame cell)の出現が認められます。



 

病理組織
肉眼的な見た目や好発部位は皮膚組織球腫と似ていますが、組織学的には低倍での印象が異なります。多形核を有する類円形細胞のシート状増殖がみられ、細い線維性間質に区画されてコード状や胞巣状に見えることもあります。腫瘍細胞の表皮向性はありません。大型の濃染性核、単核や分葉核、多核など、核の多形性が顕著なことが特徴です。細胞質は少量~中等量の好酸性~両染性の類円形です。正常な形質細胞で特徴的とされる車軸状の核はほとんどありませんが、偏在性核の腫瘍細胞は見られます。腫瘍の辺縁では、正常な形質細胞に類似し、核周囲明庭(ゴルジ野)が見られることもあります。核分裂指数は少ないことが多いですが、多いこともあります。しばしば免疫グロブリン産生によってアミロイド沈着を伴うことがあります。

 

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予後・治療法
一般的に、犬の皮膚の髄外性形質細胞腫は良性の挙動を示し、完全摘出で治癒します。核の多形性や核分裂数などの組織学的特徴は腫瘍の挙動とは関連しません。ただし、口腔や皮下の形質細胞腫は浸潤性を示すことがあるので注意が必要です。局所再発は、浸潤性のある腫瘍や広範囲切除がなされなかった場合には起こることがあります。皮膚形質細胞腫が離れた皮膚に転移することは稀であり、多発性に皮膚病変がある場合には多発性骨髄腫の可能性を考える必要があります。皮膚の髄外性形質細胞腫によってモノクローナルガンマパチーを起こすことも一般的ではありません。


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