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犬猫の腫瘍 脾臓:腫瘍様病変/良性腫瘍

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血腫 Hematoma

物理的な実質構造の損傷による出血や血液の貯留です。外傷や結節性過形成、血管肉腫などが主な原因ですが、原因不明で特発性に形成されることもあります。
 

細胞診
細胞診のみで血腫と判定することは困難ですが、脾臓血腫に伴う変性壊死部から細胞が採取されると,多量の変性物が観察されることがあります。また時に、病変部での出血を示唆するヘモジデリン色素(黒青色)やヘマトイジン結晶(黄金色)を貪食したマクロファージが散見されることもあります。
 

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脾臓血腫。壊死部からの細胞診塗抹。変性した赤血球や変性物が採取されています。
 

病理組織
脾臓実質において概ね境界明瞭な病変が形成され、病変は主に貯留した赤血球で構成されます。病変が古くなるとヘモジデリン貪食マクロファージや線維化が起こります。また、正常実質と血腫の境界部や血腫内に血腫の原因となる病変(結節性過形成や血管肉腫など)が存在していることがあるので、病理検査では境界部を重点的に検査します。
 

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予後・治療法
血腫の原因により予後は様々です。

結節性過形成 Nodular hyperplasia

結節性過形成は、犬の脾臓に腫瘤状病変を形成する病変としては最も発生率が高く、猫では脾臓の病変の約3%とされています。病変の大きさは1cm以下のものから20cmを超えるものまで様々です。多発することもあります。犬での発生年齢の中央値は約11歳です。臨床症状はなく、小型の病変は超音波検査などにより偶発的に発見されることもよくあります。ただし、血腫を伴うとそれに関連した嘔吐や元気消失、腹部膨満などの臨床症状を呈することがあります。
 

細胞診
リンパ節の反応性過形成と同様、観察される細胞構成としては多様であり、主体となるのは小型の成熟リンパ球ですが、中型および大型リンパ球が増加して認められます。他に形質細胞やマクロファージ、肥満細胞も混在してみられます。髄外造血を伴うこともあります。このような場合、造血細胞由来の芽細胞(骨髄芽球など)は時に幼若リンパ球との鑑別が困難となるため、観察には注意が必要です。また脾臓の細胞診では血液成分により希釈されることが多く、観察部位によって中型/大型の幼若リンパ球が集簇状に観察されることもあります.そのため幼若リンパ球の出現頻度の評価には複数視野を観察し,標本全体の細胞構成を総合的に評価する必要があります。また小型リンパ球が主体として採取されてきた場合には、高分化型リンパ腫との鑑別が困難となります。
 

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犬の脾臓の結節性過形成。左:大小様々なリンパ球が混在してみられます。他に形質細胞(黒矢印)や髄外造血を示唆する造血細胞(赤矢印;骨髄球や後骨髄球など)が混在しています。右:小型リンパ球が主体として採取されているパターン。このような場合、高分化型リンパ腫との明確な判別は細胞診検査のみでは困難となります。
 

病理組織
脾臓構成細胞による限局性の良性増殖で、どのタイプの細胞が優勢に増殖しているかによって、大まかに4種類に分類されます。

  • リンパ型結節性過形成:大型のリンパ濾胞で主に構成される
  • 脾臓型結節性過形成:赤脾髄の成分で構成される
  • 造血型結節性過形成:造血細胞で構成される
  • 複合型結節性過形成:リンパ濾胞や間質の細胞、組織球が混在する

 

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予後・治療法
結節性過形成は良性病変ですので、転移を起こすことはありませんが、血腫の原因になることがあります。脾臓摘出後は良好な予後が期待されます。

骨髄脂肪腫 Myelolipoma

骨髄脂肪腫は良性腫瘍で脾臓や肝臓、副腎などで観察されます。老齢の犬や猫でよくみられます。病変の大きさは数mm~10cm以上になることもあります。臨床症状は特になく、超音波検査や剖検時にしばしば偶発的に発見されることもあります。ただし、病変が大型化したり、血腫を伴っている場合、それに関連して嘔吐や元気消失、腹部膨満などの症状を呈することがあります。
 

細胞診
まるで骨髄吸引標本をみているかのように赤芽球系、骨髄球系、巨核球系の造血細胞がそれぞれ分化傾向を伴って観察されます。赤芽球島(分化段階の赤芽球がマクロファージを取り囲む像;鉄などの受け渡しが行われている)が認められることがあります。細胞診のみで骨髄脂肪腫と脾臓の単なる髄外造血とを明確に区別することはできませんが、背景に脂肪滴の空隙が豊富に観察される場合は骨髓脂肪腫の可能性を考えます。また造血細胞由来の芽細胞(骨髄芽球など)は時に幼若リンパ球との鑑別が困難となるため、観察には注意が必要です。
 

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髄外造血。左:小型リンパ球を主体とする脾臓構築細胞と赤芽球系および骨髄球系、巨核球系の造血由来細胞が混在しています。右:マクロファージを取り囲む赤芽球系細胞(赤芽球島)。
 

病理組織
骨髄脂肪腫は成熟脂肪組織と造血細胞で構成されています。脂肪細胞には異型性や核分裂像はみられません。造血細胞は様々な割合で骨髄球系、赤芽球系ならびに巨核球系細胞が混在します。被膜を持つことはほとんどありませんが、概ね境界明瞭な病巣を形成します。
 

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予後・治療法
骨髄脂肪腫は良性腫瘍ですので、転移を起こすことはありません。脾臓摘出後は良好な予後が期待されます。

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